2012年03月18日

安永先生によせて

安永先生によせて
昔 文芸番組を作るに際し、安永蕗子さんにご出演をお願いしようという事で、
ラジオ制作の部長と、お宅までお願いにうかがいました。
ご出演戴くのは なかなか難しいのではないかと聞かされての訪問でした。
企画書をご覧いただき、お願いをしていましたら、
番組の題が良いと言って戴き、月に一度、短歌についてお話戴くことになりました。
番組は、私の心象風景をタイトルにした「杜の風書房」といいます。


安永先生によせて

戦前は、熊本城の長塀の外側にも桜の木があったそうです。
昭和21年春、見事に咲いた桜を、人々は呆然と眺めていたそうです。
国破れて山河あり
人はそれぞれでしょうが、それでも桜は咲く。
万感の思いでその花を見ましたとおっしゃいました。
「勇気づけられる」「元気づけられる」ではない「万感の思い」
言葉を、いかに推敲しながら話し、聞くべきかを肝に銘じました。


安永先生によせて

 避け得ずに 運転台に 当たりたる 
    雀のあとの まどにのこれり
 昭和天皇の御製です。
番組の中で紹介していただいたのですが、
昭和天皇は素晴らしい歌人でいらっしゃるから、
機会があれば、探して読んでごらんなさいとおっしゃいました。
やっと、「よみがえる昭和天皇」という、辺見じゅん氏と保坂正康氏の共著を見つけ、
ゆっくり 大切に 考えながら読み終わろうとしていたところに、
今朝の新聞で 安永先生のご逝去を知りました。

人懐っこく、にじり寄っていける性質ではありませんから、
思いは深くとも、番組の後は、遠くから御様子を拝見していました。

天寿を全うされたと思います。
こころから、ご冥福をお祈りいたします。



Posted by 白石 裕美子 at 22:41│Comments(0)
 
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